介護リーダーと介護士の実務的な違いとは何か、簡単に言えば“マネジメント”これに尽きます。どのような仕事でもある程度立場のある方には【マネジメント力】が問われる事でしょう。
売り上げのマネジメント、職員のマネジメント、商品のマネジメント、一言でマネジメントと言っても様々な場面でこの言葉が使われています。
さて今回は介護リーダーで必要なマネジメント力について触れていきたいと思います。私の体験談も交えていくつかご紹介致します。
介護リーダーが行う必要なマネジメントの種類について
人間関係
介護施設では年齢、性別、国籍問わず様々な人たちが働いています。介護リーダーはその人たちを一つに束ねる役割を担います。複数の職員で一人のご利用者様のお世話をさせていただく仕事になります。
それぞれが好き放題お世話をしていいわけではありません。
「このような目的でこの支援を行います」とご利用者様一人ひとりのニーズに沿った支援計画が必ず存在します。
様々な価値観の人間が働いていますから、職員それぞれの介護職に対する価値観もまたあると思います。
それを否定せず、各々のモチベーションを大切にしつつ最大限のパフォーマンスを発揮できるような環境にしていくのは介護リーダーのマネジメント力にかかっているといっても過言ではありあせん。
慣れてきた介護士に活
現場の介護士で全く同じ人間は世の中に存在しません。介護施設でも同じです。同じご利用者様は存在しません。
同じ病気だから、似たような症状だから、といった事は通用しません。
介護リーダーはご利用者様一人ひとりに沿った支援の方針をお伝えする事や、支援技法の確認を行います。
現場慣れしてくるとルーティン作業だと感じ始める事があります。脳が省エネに動こうとしたがるので人間である以上仕方ありません。しかし意識すれば防ぐことが可能です。
たとえば研修会などでは「3の倍数が危険」と言われています。
入社して3ヵ月目、6ヶ月目、9ヶ月目にミスが起きやすい月なので介護リーダーはそれを見越して声を掛けます。
このように介護リーダーは現場慣れしている介護士にもう一度介護技術を見直す機会を作る事もあります。
チームのモチベーションアップ
我々介護業界は物を作って売る仕事ではありません。サービスを提供するのが仕事です。現場の職員の介護サービスがその施設の価値になります。
故に介護士のパフォーマンスがモロにサービスの質に繋がる事になります。
そこで介護リーダーは現場のモチベーションを保つマネジメントを行います。
元気がない職員、ストレスが溜まっている職員を見かけると、そうなった原因をヒアリングし、解決出来る事は最大限解決しようと心がけます。
現場に介護リーダーがいなければ、モチベーションが低くなる事もあります。介護リーダーは現場のモチベーションを維持する事で、サービスの質の向上が目的になります。
介護リーダーが活躍した実例
介護リーダーのマネジメント力が発揮できた例をいくつかご紹介致します。
現場職員の声を耳に傾ける
介護施設では専門学生や大学生といった学生の受け入れを行っている施設があります。私どもの施設もその一つで毎年2回、夏休みと冬休みに受け入れを行っています。
また、近年ですと東南アジア等、海外からの受け入れも一部行っていて、中には知的障害をお持ちの方や精神障害をお持ちの方の受け入れ等様々な方を受け入れております。
今回ご紹介する話は私が介護リーダーでAさんが現場の介護士だったころの話です。
私どもの事業所で実習生の受け入れを行う事になったのですが現場介護士のAさんから「受け入れても面倒見られない」と申し出がありました。
基本的な事や業務については私が教えるので現場には迷惑がかからないとお伝えしたのですが、頑なに拒否されました。
何か理由があるのでは?と思い、ある時に声をかけて話を聞きました。
しかし話し始めた当初は「先ほどお伝えした通りです」と聞く耳を持ってくれませんでした。
私どもの施設では現場の介護士への定期面談を行っています。
そこでAさんに日ごろ感じている事を語ってくれました。
「管理者の方から介護主任(介護リーダー)をやってくれないか、と言われた」との事でした。
Aさんは急な出来事で心の整理がつかず、次第に仕事へのパフォーマンスにも影響するようになっているとの事でした。
私はその事実を初めて耳にしました。
それからAさんにやりたいかどうか?の意思確認を行いました。「迷っています。お給料が上がるのはありがたいけど不安です」との事でした。
その話を聞いた翌日から介護リーダーの仕事を時間がある時にお見せしました。
それから数日後、Aさんから「来年から介護リーダーやってみます、けど自信がなければ相談に乗ってください」と申し出がありました。結果的に、Aさんのメンタルも安定し、実習生の受け入れも了承してくださいました。
「自分の事は自分で管理してください」とは言ってはいるものの中々一人では心細くなるものです。
毎日現場の職員に声をかけられない事もありますが、必要な時に必要な助言やアクションを起こすことで現場の雰囲気がガラッと変わります。
現在、Aさんは介護リーダーとして従事されております。年齢や性別問わずリーダーシップを活かして活躍されております。
マルチに動けるのも介護リーダーの特権
入居施設で働いていた時の話です。
その時の介護リーダーはBさん、介護士のCさんが同じフロアで働いていました。
その日は夜勤の予定でした。
しかし出勤時間ぎりぎりになってプライベートの問題でどうしても夜勤に入る事が出来なくなったそうなのです。
困ったCさんは同僚に連絡をしてみるが、あまりにも急な事だったので代役が見つかりません。そんな時日勤で働いていた介護リーダーのBさんが「私、変わりますよ」と話されていました。
Bさんは日勤のお仕事が終わり帰宅したとの事でしたが、電話連絡があり代役を務めるとの事でした。
大丈夫ですか?と声をかけると「疲れているけど、夜勤なら何とか大丈夫です。休憩中は寝てしまうかも」と冗談交じりで話されていました。
現場の職員が急遽休みになるケースは非常に多いのです。
どうしても代役が見つからないし困った際は管理者やサービス管理責任者、または介護リーダーが代役を務めてくださいます。
仕事が休みにくい介護施設も残念ながら存在しますが、上が代わりに現場に入ってくださる事もあります。
まとめ
2019年10月から介護リーダーやベテラン職員の給与水準向上を目的とした【介護職員等特定処遇改善加算】が始まりました。
私どもの地域では介護士の給与水準が少しでも上がるのか、と話題になった内容でした。
「技能・経験を持ったリーダー級の職員」の処遇改善を目的として生まれました。
加算の取得要件は「技能・経験を持ったリーダー級の職員を勤続10年以上の介護福祉士」と定められています。
これまであやふやだった介護リーダーの存在ですが、この加算が生まれた事により施設も“介護リーダー”を意識的に配置する所が出て来るかもしれません。
介護リーダーが育つことで管理者やサービス管理責任者の負担はもちろん、現場への合理的配慮も生まれる事で業務が円滑に行えることでしょう。
今後、施設内での管理職の活躍が期待される中、介護リーダーに挑戦してみよう、と一人でも多くの方に思っていただけたら幸いです。